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2022バルカーカップについて


先日のバルカーカップについて・・腰が重いですけどもちょっと書きましょうか。
Twitterをやらない方も多いかと思うので、状況をあまり知らない方も多いかもしれませんね。

JDCが主催、バルカーが協賛した2022年のバルカーカップですが、プロとアマが一緒の試合に出るということで、話題になっていました。
結果は、アマの藤井・中村組、小島・森田組の優勝。それ以外にもアマ選手が決勝に食い込み、プロ統一ファイナリストが負けたりと、波乱の大会でした。

その結果を受けて、Twitterは大荒れ。
プロの選手からアマ選手、ダンス愛好家までが色々な意見やお気持ちを表明。中には他人の意見をけなす人なども、、、やれやれです。誰でも意見を出せるということはいい部分もありますが、目を覆いたくなる部分もあります。

私も大会について思うことはありますが、それよりなぜこんなに荒れてしまうのか、ということについて今回は書いてみたいと思います。
ちょっと長くなりますね。

原因は大きく分けると
①プロ、アマという言葉の定義がみんなバラバラ
②ダンス界の問題について皆が自分なりの解決策を考えている
③プロや組織に対する不信感

こういったことがが根底にあるのではないかと思っています。

①プロアマの言葉の定義

これが一番大きな問題の原因になっていると思います。

社交ダンス界では長らくアマとプロの言葉の定義は、以下のようにとらえられてきました。

  • アマ…社交ダンスの仕事(レッスンやデモ)以外の仕事をもちアマチュア区分競技ダンスに出ている人たち
  • プロ…社交ダンスの仕事(レッスンやデモ)の仕事をもちプロフェッショナル区分競技ダンスに出ている人たち

これ以外にも、レッスンプロ(基本的にプロ競技会には出ていないが、社交ダンスのレッスンなどで生計を立てている)人もいます。

社交ダンスの仕事をしながらアマ区分の競技ダンスに出ることは、基本的に選手規約などで制限されていました。(またこの逆のパターンの社交ダンス以外の仕事をしながらプロ区分競技会に出ている人、というのはわずかにいるようですが、ほぼいません)
社交ダンス界のほとんどのプロ競技選手=プロ社交ダンス講師、という構図が長らく続いてきたので、それで問題はありませんでした。

しかし状況が変わってきて、数年前から一部の競技団体では「社交ダンスの仕事をしながらアマ区分の競技ダンスに出ること」をOKとしたのです。主に一部の子供のころからダンスを始めた選手たちがこれに該当するのですが、一部の団体・大会では規約に違反しているということで出場ができない事態などが発生していました。

要するに何が問題なのかというと、プロの競技団体に所属せずに、いわゆるプロ行為(社交ダンスの仕事)を行う、という人たちの処遇が団体などによってバラバラなのです。そして、その辺の対応を一部組織が曖昧にしてきたことがあったり、愛好家の中で「プロ」という言葉の定義の不一致があったり、そして「どの大会に出るのかは選手の自由だ」といった極論などがあったりして、ここ数年たびたび物議をかもしてきたのです。

非常に根が深い問題です。
一番の問題は、競技会としてのプロと、職業としてのプロがごっちゃになっていることです。

一部のアマチュアの選手たちは、今回の大会結果でも示された通りダンスのレベルとしては、プロとそん色のないレベルにあるのでしょう。そして彼らはダンスの仕事で食べている人が多いのかと思います。
ですから彼らは、競技会のアマチュア区分に出ているというだけで事実上のプロと言えるでしょう。
そして旧来のプロは、プロダンス組織に必ず属していますが、彼らは属していません(属したがらないようです・・まあ気持ちはわかります)

ちなみに私はこういった新しい形のアマ選手たちの事を、わかりやすく「セミプロ」と呼ぶべきではないのかと思っています。
今までセミプロという言葉は、プロの競技選手(プロの先生)と組んでいるパートナーさんが、ダンスのお仕事ではなく一般の職業についている場合に、そう呼ばれてきました。しかし、本来の意味はダンスを職業にしているプロと同じぐらいダンスで稼いでいる人たちの事を指します。(旧来のパートナーさんは、「プロパートナー」というのはいかがでしょうか?)

とにもかくにも、今までの日本のダンス界の区分ではうまく分けきれなくなったものを、あいまいにしたり、無理やりくっつけたりした結果が、今回の炎上の一因なのではないかと思っています。

②ダンス界の問題について皆が自分なりの解決策を考えている

「戦争においては、それぞれに正義を背負っている」

こんな言葉を聞いたことがないでしょうか?
まさに今回の炎上の一因は、みんなそれぞれにこうしたらいい、こうなってほしい、と思っているそれぞれの正義を、ツイッターという不特定多数の人が見ている場所で、表した結果でしょう。
というより、バルカーという大きなスポンサーが、このダンス界に対して(バルカーの持つ)正義の一撃を下した、という事がこの状況を引き起こしたのでしょう。

ダンス界の斜陽はみんな感じており、このままではいけない、何とかしなくてはいけない。
そう思ってみんなが行動すればするほど、対立の構造が出来上がっていく、、、何とも悲しい現実です。

しかし、私はこのことを予想していました。利権が無くなればなくなるほど、市場が小さくなればなるほど、ダンス界はもめていきます。残念ながら、今後もいろんな形でダンス界内での対立はまだまだ続いていくでしょう。

③プロや組織に対する不信感

そして、これらの状況や他人の意見・気持ちについて、Twitterで激しく攻撃しているしている方が一部いたり、そうでなくても結構否定的な意見を言う方が散見されました。

やはりそこには、こういった問題を上手く解決したり、無難に進めたりすることができない、ダンス界の組織、そしてそこに属するプロ選手への不信感があるのだろうなあ、と思いました。

日本には「判官びいき」という言葉もあるので、アマチュア選手(セミプロ)が出場できない制限がある、という話を聞くと、アマチュア選手を応援したい・妨害する組織は悪だ!、という単純な話もあると思います。
が、今回のバルカーカップについての炎上は、やはりそういったことを超えた部分で、根底にプロ選手やプロ組織に大きな不信感があるのではないか、と思った次第です。

まとめ

以上のような、長年の問題が積み重なってきたところに、劇薬を放り込み、その結果が激しい化学反応が起きたわけですね。これがどのように今後に影響を与えていくのかは読めません。老舗のダンス界が、あっさりとセミプロの存在を受け入れる、ということも予想しにくいです。どうなるか、わかりません。が、、たぶんグダグダのままでしょう。

正直、業界リーダーであるべきJBDFも巨体・老化で動けませんし、先鋭的なことをしようとしているJDCもあまり褒められるような動き方ではないと思います。

競技会は実力本位であるべきかとは思いますが、多くの選手は競技会の賞金では食べていません。お客様(生徒さん)がついて、そのレッスンでの生活をしています。選手のメンツをつぶすことは、お客様のプライドや気持ちをつぶすことにもなりかねないのです。

我々の業界の在り方は、トップ競技選手が世界に活躍すれば潤う、といった業界では絶対にありません。
ここを間違えて運営をしてしまえば、凋落を防ぐことは敵わないでしょう。
一人の競技選手が存在するのに、少なくとも10~20人の社交ダンス愛好家(生徒さん)の存在が必要です。

今回のバルカーカップは、単なるアマ・プロの問題ではなく、社交ダンス愛好家全体に対してどのようにこの業界を楽しんでもらうか、という根本的な問題を突きつけられている、というとても重い事だったのではないかと思っています。

個人のお気持ち

個人的な意見を書くチャンスがあまりなかったので最後に、一つ。
プロの選手自体は、正直あまりアマの選手に負けてしまうことは重要に思っていないのではないかと思います。

セミプロ(トップアマ)のレベルはここ10年で恐ろしく上がっており、一緒に踊ったら負けるかも、というのは正直なところ多くのプロ選手が思っていることだと思います。
実際セミプロの子たちのやっていることは、教室単位でしか動けないプロ以上の事をやっていますから。それを子供のころからのエリートがやっているのです。30~40歳のプロ選手がそれと戦えるということにだんだん無理が出てくるのは間違いありません。

それよりプロの人が問題に思っているのは、プロの組織に属さないでアマチュア(一般職業)の方たちの領域を犯しているのはどうなのか?なんでプロにならないのか?ということなんだと思うのですよね。

まあ、こんなゴタゴタした業界組織に属して、自由にやれないのは嫌だ、という気持ちもわからないでもありません。昔は、教室に所属しないと得られなかったダンスの知識が、昔に比べて遥かに簡単に手に入れられます。外人コーチャーに習うのも、コネクションが簡単に得られます。プロの選手しかもっていなかった権益(情報)が、アマチュアの立場でも容易に得られるようになっているのだから、教室に勤めたり組織に属したりする必要はない、と思う気持ちはわからないでもありません。

ただ、それだけだとダンス界の凋落はより一層進むでしょう。競技としてのプロと、愛好家としてのアマチュアの区別をつけない限り、一般人は競技会出場を楽しめません。競技のためだけに先鋭化したジャンルは必ず衰退します。
社交ダンス愛好家のために組織や競技会の改革を、プロの選手はもちろんのこと、彼らからも協力してもらう必要があるのではないかと思います。本来、組織というのはそのためにあるものです。

まあ、JDCはもう全部の大会をプロアマ区別なくしてみてはどうですかね?ぜーんぶ一緒に出場、世界でも他にない超先鋭的な大会。
そして統一でない統一全日本は早いところやめて、有志で運営する出場自由の天下一舞踏会を開催したらいいんじゃないですかね?だめですかね。