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2017.08.15
テクニック競技ダンスでするべき3つのトレーニング!
競技ダンスでは、筋肉の特性を知って、目的に合わせたトレーニングが必要です
近年、競技ダンスの世界にもウェイトトレーニングの必要性を訴える声が多いことはご存知でしょうか?
私がダンスを始めたころの20年前は、とにかく躍り込み、の重要性を言われ、がむしゃらに踊り続けたりすることが求められましたが、今現在の世界のトップクラスの選手は明らかに、躍り込みだけではつかない体格・スピードそして可動範囲を持っています。
ウェイトトレーニングの重要性は、野球・サッカーの世界でも言われていますが、日本ではウェイトトレーニングに懐疑的な話も聞きます。
例えば、筋肉をつけると可動範囲が狭くなる、スピードがなくなる、などという話ですね。
一方で、サッカーでは先日、いわきFCというJリーグ7部にあたるチームが、Jリーグ1部のコンサドーレ札幌を破る快挙がありました。
いわきFCは、練習の半分近くをウェイトトレーニングに費やしている社会人チームです。
DSN ZONE- いわきFC
ウェイトトレーニングは果たして効果があるのでしょうか?また競技ダンサーはどんなトレーニングをするべきなのだろうか?
今回は、競技ダンサーの行うべきトレーニングについて書いてみました。
スポーツの特性に合わせた筋肉が必要
まずはこちらの記事を読んでみてください。
「野球のトレーニングに走り込みは必要なのか?」
要約すると、野球は瞬発力、パワーが主に必要なトレーニングなので、過剰な走り込みは意味がない。
筋肉には種類があり、目的に沿ったトレーニングをしなければ意味がない、という事が書かれています。
ちなみに筋肉の種類とは、どんなものでしょうか?
皆さんも一度は聞いたことがあるかと思いますが、速筋と遅筋というものですね。
速筋というのは、パワーを生み出す筋肉で、別名「白筋」
遅筋というのは、持久力に強い筋肉で、別名「赤筋」
この2種類の筋肉が混ぜ合わさって筋肉が出来ています。
●速筋
速筋(白筋)を鍛えるには、重いものなどを使って筋肉に強い負荷をかけないといけないので、ウェイトトレーニングをすることになります。
基本的に、速筋は筋肥大を起こすので、速筋を鍛えれば太くなります。
100m走などのスプリンターは速筋を鍛えるために、もりもりの筋肉になります。
●遅筋
遅筋(赤筋)を鍛えるには、筋肉に長時間、緩めの負荷をかけてあげる必要があります。走り込みや躍り込みは長時間動く持久運動なので、遅筋を鍛えるトレーニングになりますね。
そして遅筋は、筋肥大を起こさないでの、鍛えても太くなりません。むしろ速筋の割合が減り、細くなります。
マラソンランナーなどの長時間動く人は基本的に細くなります。
競技ダンサーに必要な筋肉の種類は?
前置きが長くなりましたが、競技ダンスで必要な筋肉はどちらが必要なのでしょうか?
答えは、おそらく両方です。
競技ダンスは、長時間踊り続けながら、踊りの要所要所にスピードを出した動きを入れていくことが必要です。サッカーと特性は似ているかもしれません。(使う筋肉は全然違いますが)
競技ダンスの大会においては、1分30秒の踊りを4~5種目連続で踊り、それを一日に4~7回も踊ります。ですから基本的に、持久力がないとお話にならないのは、間違いないでしょう。
昔の先生は、とにかく躍り込め!、といいますが、決して間違っているわけではありません。持久力がなければ、踊りきることが出来ないのです。
実際私もプロになったころは、とにかく躍り込みの重要性を言われ、ひたすら踊っていました。
もちろんそれに連れて、体はどんどん痩せて細くなっていきました。
ただでさえ身長が低いのに、体は細くなる一方でしたね(涙)
でも中々上手くなった気がしませんでした。というか出来ないことが多すぎました。
(もちろん躍り込みの効果もあります。それは間違いないです)
ところが今のダンスは、昔と踊りが全然違います。
1982 ラテン&スタンダード
2017 ラテン
2017 スタンダード
30年前の競技ダンスの動画を見比べてもらえれば違いが一目瞭然ですね。
スタンダードは、まるでラテンのようにスウェイをかけ体をねじり、素早く動きます。
ラテンは、みんなマッチョな体に、あり得ないほどのスピードを出して踊ります。ヘッドアクションの可動範囲は、首が折れてるんじゃないかと思うほど、後ろに倒れ一瞬で戻ってきます。
この様な踊り方は、躍り込みだけでは絶対にできません。
躍り込み以外に、別途、高負荷のウェイトトレーニングが絶対に必要なのです。
ただ、この速筋と遅筋を同時に鍛える、というのは中々難しい部分もあるようです。
基本的に、人間の速筋と遅筋の割合というのは遺伝子的に決まっているようで、あとから鍛えて割合を変えることができないようなのです。
なので、速筋の割合が多い人は、パワー・スピードが必要なスポーツが向いていますし、遅筋の割合が多い人は、持久力が必要なスポーツが向いています。
私の個人的な感覚では、どちらかというと競技ダンスは速筋の割合が多い人の方が有利なような気もします。
(速筋(白筋)は、鍛え方によっては、遅筋(赤筋)に変えていく事もできるようです)
そして、さらにこの筋肉というのは鍛えただけではうまく動かすことができません。
実際に動作をするには、複数の筋肉が絶妙なタイミングで動き、絶妙な力加減を必要とします。
英語では”コーディネーション(cordination)”というようです。私の習っていた先生がよく言っていた言葉です。日本語では 〔筋肉の動きの〕協調 、と訳されるでしょうか。
これもトレーニングに必要な内容になってきます。
要するに、現代の競技ダンサーはこの速筋と遅筋の両方を鍛え、かつ、その筋肉をコントロールすることをしていかないといけないのですね。
では具体的にどのようなトレーニングをすればいいのでしょうか?
競技ダンサーがするべき3つのトレーニング
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以下は、私が習ってきたことや、外国人コーチャーが講習していることや、聞いたことや調べたことを独自に考察し、合わせて導いたものです。
トレーニングの方法については、海外ではチームごとに色々なトレーニング方法が考案されているようで、日本はヨーロッパなどにだいぶ遅れをとってしまっている感がありますが、ここ数年海外のトレーニング方法を日本のトッププロが習ってきたり、JDSFが団体を上げて導入し始めている動きもあります。
①速筋を鍛えるトレーニング
高負荷をかける動作を行います。まずは10回ぐらいで限界になるような負荷がよいです。(最終的には3回ぐらいが限界の負荷にする、ただし各関節などに非常に負荷がかかるので専門家のアドバイスを受けながらやるべきです)
基本的にはジムなどでのウェイトトレーニングになるでしょう。
特に上半身の速筋は、ウェイトトレーニング以外では非常に鍛えにくいのです。普通にダンスをしていては、不足する部分ですので、しっかりと鍛えるといいでしょう。
まずは、基本的なウェイトトレーニングでOKです。
- 太もも(前側・後ろ側・内側)
- ふくらはぎ
- 腹筋、背筋(背筋は上部と下部に別に鍛えるとベスト)
- 腹筋、背筋をねじる
- 胸筋(ダンスの運動にあまり必要ありませんが、見せ筋として重要)
- わき腹
(専門用語は使わずに説明しています。詳しいことを知りたい人はトレーナーやググってください)
※基本的に腕や肩の筋肉をもりもりに鍛える必要はありません。多少は必要ですが。
また他にも、かかとを上げ下げするトレーニングも、ふくらはぎや太ももの速筋を鍛えられていいのですが、できれば重りを付けたり、誰かをおぶさったりして、自分の体重以上に負荷をかけるとよいでしょう。
おんぶをしながら踊る、という方法も聞いたことがあります。効果も非常に高いと思うのですが、ひざへの負荷が非常に心配です。正直お勧めできません。
他にも体操選手などが行っているトレーニングが非常にお勧めです。
(体操選手は腕も鍛えるので、そこの部分はそこまで必要ないと思いますが)
体操選手のトレーニングは、各国で国がお金をかけて開発しているので、非常に参考にすべきでしょう。
サイドブリッジ(速筋)、フロントブリッジ(エルボートゥ)は今は学生さんがやっていることが多いようですが、そのままでは意外と負荷は低いです。
ウェイトを使わない場合は、バリエーションを使って負荷を上げる必要があります。
②遅筋を鍛えるトレーニング
こちらは、長時間動き続けることが必要になります。低負荷で長時間動くトレーニングをします。
具体的には、往復・ボックスもしくはヘキサ(6角)のナチュラルターン・リバースターンをひたすら繰り返すことや、ロンデシャッセ、ツイストシャッセ、往復のウォーク&ロックを繰り返す、プロムナードラン・ホイスク・ボタフォゴなどの基本的な動作を、長時間(3分以上)を繰り返すことなどがお勧めです。
ちなみにこのトレーニングによって、次に紹介するコントロールトレーニングも同時に行えますので、一石二鳥です。
もちろん、ひたすらステップを躍り込む躍り込みでもよいですが、複雑なバリエーションを踊りながら、トレーニングをするというのはあまり勧められません。
躍り込みは、下記に記した筋肉のコントロールトレーニングの一つとして考えるべきでしょう。
③筋肉のコントロールトレーニング
先ほど書いたように、筋肉はただ鍛えるだけでは使い物になりません。
それを高いレベルでコントロールしなくてはなりません。
ではダンサーは、そのコントロールはどのようにしてトレーニングするべきなのでしょうか?
基本的な考えは、繰り返し、そして遅くから速く、です。
まずは理想の動きを知りましょう。
動画の真似でもいいです。コーチャーから習った動き方でもいいです。
それをピッチコントロール機能を使い、マイナス50%とかマイナス100%と、とても遅くして、繰り返し理想の動きを行います。
それに慣れてきたら、少しづつ早くしていきます。
最後は2%刻みぐらいでも大丈夫ですが、この最後のあたりのスピードに慣れるのが非常にしんどいです。
でも、しんどいという事はトレーニングという事ですね。良いことです。
最後は、本番と同じスピードで繰り返します。
上級者はここに、表現力などのアクションを加えていくことになります。
そして、これらのトレーニングを交互に行うサーキットトレーニングを行っている人たちもいます。このトレーニングは超しんどいです。死ねます。
実はこれ学生ダンス部の時にやらされる事を、もっと質を上げて目的を考えてやる、というだけなのです。
学生時代の地獄の基礎錬は、学生が考え出したものとしては、本当にとても良く出来ていると思います。
以上これらの3つのトレーニングを行うことで、ダンサーの踊りは確実に変わっていきます。
特に、踊りに癖がある、と言われる人は、筋肉の発達に偏りがあると考えて間違えありません。この3つのうちのどれかが極端に不足していると思われます。
身体的な問題はダンスの技術レッスンで直せない部分である、ということが問題点になるのですね。
もちろん、これ以外にも表現力や音感などの必要なものもあるのですが、、、ダンサーって大変ですね。ほんと鍛えるところが多すぎです。それだけに、他の人が出来ないことが出来る人の踊りは感動があるのでしょう。
ちなみに、こんなトレーニングをバカまじめにやらなくても、かなりのレベルで最初からできちゃう人がいるのは事実です。
私もプロの世界でそういった人を何人も見てきました。ただ、割合でいうと数百人に一人という、いわゆる天才といわれる人たちになると思います。
ただ、そういった人たちでさえ日本ではトップレベルでも、世界では全く戦えていません。
世界の天才たちが、さらにこのようなトレーニングで徹底的に幼少のころから鍛えてきているのが、世界のレベルになっているようです。
日本人が世界で戦えないのは、情報不足や考え方の偏りで鍛えるべき部分が足りていないものがある、と考えるべきでしょう。
我々教える側としても、どうしたら効率的に踊れる体になるのか、という事は常に勉強していかないといけない事であると、考えています。
何年もダンスを習ってきて上達しないと悩んでいる方は、ぜひ相談してみてください。あなたに何が不足しているのかを、まずは知るべきです。
追記.
ちなみに、”ホールドをが上手く出来ない、肩が上がってしまう、”という問題も筋トレで直すことができますよ。
この肩があることについて、プロの先生に直す方法を聞いても見当違いな話がよく返ってきてしまいます。
まあ、そりゃそうですよね、プロの世界で活躍している先生たちなんかは最初からホールドなんかはきれいにできてしまっているのです。だから、どうやったら直せるかももちろん知らないでしょう。
肩が上がる現象も筋肉トレーニングで治せますよ。ホールドで悩んでいる方は、ぜひ聞きに来てください。